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第8回 信頼には信頼で 不信には不信で返す

1930年代のGE(ゼネラル・エレクトリック社)での出来事です。
当時、GEのある工場では、工具が保管場所から頻繁になくなっていました。会社の所有物は、社員が勝手に持ち出していけないことはどこでも共通することであり、盗難ともなれば会社の損失になるだけでなく、犯罪です。

そこで、会社はセキュリティーを強化し、社員たちが工場の工具を持ち出さないように厳重な警備体制をとったのです。その結果、逆に工具を盗み出す社員が増えてしまったといいます。
なぜこんなことが起こったのでしょうか。

実は、仕事熱心な社員たちは、プライベートな時間にも会社の仕事を片付けるために、会社の工具を使っていたのです。
ところがその事実を理解しなかったトップは、セキュリティーを強化。その結果、トップから不信感を突きつけられた社員たちは、「そんなに俺らのことが信じられないなら、そういうヤツらになってやるよ」とばかりにその“期待通り”の行動をとったのでした。

警備体制を敷くまでは、工具を持ち帰ることがあっても、必ず翌日には会社に戻していた社員たちが、警備の隙を見つけて、工具を盗み出すようになってしまったのです。
会社が、工具があるべきところになかったというその現象だけを見て、実際に現場で何が起こっているかを確認しなかったツケが相互不信と損失につながった一つの例です。

人間は、信頼には信義ある行動で返し、不信には背信の行為でお返するものなのです。