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第4回 売り物に手抜きをするのは貧乏人の下ごしらえ

江戸時代、河内木綿の集散地として栄えた平野村(現在の大阪・相原町平野)に1軒のまんじゅう屋がありました。
かつては繁盛していましたが、最近は売り上げも落ち込んで、作っても売れ残り、カビが生えて捨てる方が多くなってしまいました。
後は店をたたんで商売替えするしかないと、夫婦で相談しているところへ、木綿の行商をしているという一人の男がやって来て、夫婦にお願いをしました。

「木綿の行商がうまくいかないので、商売替えをしたいのです。おたくの店を貸してくれませんか?女房が京の菓子屋に奉公していたので、ここでまんじゅう作りをしてみたいのです」

まんじゅう屋の夫婦は、自分たちがやって来てうまく行かなかったのに、素人がやってうまく行くわけがないと気乗りがしません。しかし、「どうしても!」と言うし、家賃を払ってくれるなら、渡りに船ということで話がまとまりました。

まんじゅう屋は奈良に引越して商売を始めたものの、相変らず思うようには売れません。1年後のある日、まんじゅう屋は所用で平野村を訪れました。うまくいっているはずはないと思いながら、あの夫婦がどうしているかと気になって店の前にやって来ました。

ところがどうしたわけか、店の前には人がたくさん並んでおり、店の中では、あの夫婦がてんてこ舞いでお客をさばいています。
店の座敷に上がり込んだ元の店主は、神棚に向かって愚痴を並べだしました。
「神様、私はなけなしの金をはたいて、毎朝、お神酒を上げ商売繁盛をお祈りしてきました。それなのにうまくいかず、素人の男に福を与えるとはひどいじゃありませんか」

横で聞いていた男は、
「神様を恨むなど、お門違いです。私が木綿の行商をやっていた時、実は儲けに目がくらみ、お客の前で手品師そこのけの早業で布をごまかして商いをしていたんです。二度目に行くと、お客はもうだれも買ってくれなかった。
あなたのやっていたまんじゅう屋も、自分と同じことをしているのでないかと思いました。そのため、1~2年は儲けないでもいいと思い、さらに、小豆や砂糖もできるだけいいものを使って、まんじゅうを作ることにしました。お客は正直なもので、このとおり、たくさん来て頂いて、儲かるようになりました」

そして「売り物に手抜きをするは、貧乏人の下ごしらえ」と言いました。